いやらしいと呼ばれたくて。
今日の曲*1
好きな人になら何をされても、いや、ある程度なことなら受け入れられるのが
その人を友達としてではなくそれ以上に好きになったって証だと思う。
好きな人とだったら、ただの普通の日常がほんわか暖かくなる。
食事だって、ただの親子丼から極上の親子丼に変わる。
隣にいるだけで、何もなくても満足できる。
そんな日常を過ごしたかった。
周りはどんどん結婚していく。
子供だってもう小学校って友達もいた。
別に焦っているわけではなかったけど
家族ってものにすごく憧れていたの。
だから私を好きって言ってくれるのなら、少しの辛さなら耐えられた。
もしかしたらこの人と家族になれるのかもって。
そう。そんなんだから、私を少しでも褒めてくれるのなら私はそれに慣れてみようと思ったりもしてた。
あの日のことはもうあまり覚えていない。
とっさに頭をフル回転させて、私は小説家になったし、テレビの生放送に出てるキャスターになった。
「何を想像しとるん?」
「一人でしとる時どんなこと想像しとるん?」
やばい。なんて答えよう。
「俺そーゆーのすっごい興奮するわ!」
私は誰かの愛人になりたかったわけでもない。
でも、いつも言われてた。
「君って愛人タイプだよね。」
「僕の愛人にならない?」
私は仕事や友達の愚痴を言わなかった。
聞き分けも良くってあっさり引き下がるし、自分で言うのも何だけど、胸がすごく大きいわけでもなかったけれどセクシーだった。
人のことを根掘り葉掘り聞かないし、そしてすごく聞上手だった。
わがままも言わなかった。
私はいつも思ってた。
何で恋人にはなれないんだろうって。
何で選ばれないんだろうって。
私は浮気をしてことは一度もなかったし、料理もプロ級だし、こんな一筋な子いないのに。って。
愛人の募集は月に最低1回はあった。
すっごく派手な格好をしていたわけではなかったけど、周りからはお金がかかりそうとか、遊んでそうとか性格きつそうとか思われていたんだと思う。
だから遊ぶくらいが丁度いいって。
でも「色気」があることは私の中でとても重要なことだった。
「いやらしい」って言われるのは最高の誉め言葉だった。
女は清く正しくいやらしくあれ!
ちなみに「やらしい」とは体の一部を「見せる」ではなく雰囲気を「魅せる」だ。
小綺麗にして白いシャツをキチっと着て、凛と胸を張って。
それだけで「色気」って湧き出てくるものだ。
その「色気」を出すことは生活の一部なのだ。
話を戻そう。
そう、「興奮するわ!」
私には「お前っていやらしすぎるわ!」って聞こえた。
興奮するって言われて喜ばない女がいるのだろうか。
私には極上の言葉だ。
こっちまで興奮してくる。
そう。これを乱してはいけない。
いい女はこの空気を乱してはいけない。
私は創った。
あらゆるストーリーを。
彼がもっと興奮するように。
「宅配が届いて玄関を開けたらいきなり扉を閉められて押し倒されるの。」
「電車に乗っていたら後ろから手が伸びてくるの。でも超満員で身動きも取れなくって抵抗できないの。」
「研究室に閉じ込められて、教授に試験管を.......」
私に宿題が出来た。
彼に会うまでに私はあらゆるストーリーを作らなければならなかった。
それを聞く度に興奮する彼を見るのが最高だった。
しかし、すでに興奮して出来上がってしまった彼とは入れるだけのセックスが多々あった。
なんだろう。この虚しさ。
釣った魚に餌はやらない。ではなくて、1日寝かせば熟成してさらに美味しくなるものを我慢できずに食べてしまうような。
いや、自分だけ満足したら満足なのか?
いや、私がわがままを言わないからだ。
いや、私がもっと甘えないからだ。
「ねぇもっと、やって?」
なんで可愛く言えないんだろう。
「私、大丈夫!」
「慣れてるから」
「これくらい大したことないの」
「きっと、彼疲れてるのよ」
あぁ私は
なんて大人なの。
違う。自分の意見もはっきり言えないガキなのよ。
ここは昭和初期の日本ではないの。
女性だって意見が言える。
頭ではわかっていても、ベットの中のぬくもりはいつだって私を惑わせる。
「気持ちいいんだろ?」
「俺をもっと興奮させて。」
私ももっと興奮したいわ。バカ。
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*1:Hello